1990年(平成2年)秋から1991年(平成3年)にかけて、
妙にその存在が気になり、幾度も腰を下ろした台がある。
それが、三共の旧要件デジパチ「フィーバーシャリオI」。
かなりのマイナー機なので、ご存じない方も多いだろう。
フィーバーシャリオI(三共、1990年登場)
(白黒画像で申し訳ないが…)
(悔しいので「777」揃いのドラムの様子を自作。割と頑張った。)
本機との出会いは、小田急線・向ケ丘遊園駅(南口)の
「ぱちんこ遊園」(閉店)という小さな店。というか、
この店以外で、本機を打ったり見たりした記憶は無い。
「ぱちんこ遊園」は、駅南口ロータリー前の商業ビル、
「中和ビル」(現存)2Fにあった。同ビルについては、
先日、1990年当時のテナントを紹介したばかりなので、
詳細はそちらをご覧頂きたい。
ロータリー奥、遊園地モノレール乗場(廃止)傍のビル外階段を上がると、
2F入口前の踊り場に、「ぱちんこ遊園」と書かれた昭和的な縦長の看板。
黄色の裸電球が、看板の縁でピカピカと光る。それを横目にビルに入ると、
中は意外なほどに薄暗い。フロア中央のラーメン「三番」をグルリと囲む、
回廊上の通路を左に進み、突き当りを右折した左側に、装飾用のシールが
張られた、レトロ調なガラス張りの店舗。やはり昭和然とした手押しの扉
(或いは自動ドアだったかもしれないが、自分の中では手押しガラス扉の
イメージが鮮烈に残る)を開けると、短めのシマが幾列も縦に並んだ店内…
それこそが、思い出の「ぱちんこ遊園」だった。半開きの扉の隙間から、
特殊景品を差しいれる、独特な地下換金所も懐かしい。
同店は、地元のオッちゃんオバちゃん、遊園駅を利用する明治や専修の
学生らが好む、典型的な「地域密着型」のホール。店内はかなり狭いが、
機種は豊富。ハネモノ、デジパチ、権利物、一発台、チューリップ台、
パチスロと、多様なラインナップだった。理由は、パチンコシマが今でいう
「バラエティコーナー」になっていたから。「1シマ全体が1機種」ではなく、
各機種1、2台のみの「少数精鋭」。商業ビルの狭いフロアで営業する上で、
店側が編み出した「商売の知恵」であろう。
件のフィーバーシャリオも、そんなパチンコシマの一角に、2台だけ設置。
場所は、一番右側の通路。背中が壁の左列シマで、異様に通路が狭かった。
本機の隣には、同じ三共のドラムデジパチ「フィーバーレクサスV」が、
コチラも2台ひっそり並んでいた(レクサスVの初当りもこの店だった)。
実を言うと、この店のシャリオもレクサスVも、異様にクギが渋かった。
2.2円交換のLN制(一部は定量制)の割に、呆れるくらい回転数が低い。
大当り確率が「1/200」と甘い事も影響したのだろうが、酷い時など、
1000円分打って、デジタルがたったの5~6回しか回らなかったり。
(2.2円LN制でこの回りは、あまりに酷い。出玉は2500前後だった)
しかも、このシマは「万年釘」状態で、いつ行っても同じような調整。
勝ちたい時に近づくべきシマではなく、当るまで突っ込もうとすれば、
大怪我する危険もあった。また、レクサスVなら保留連が期待出来たが、
シャリオは「ド」がつくノーマル機で、深追いしても、見返りは無し。
台移動したくても、シャリオは2台しかなく、台選択の幅も狭かった。
それ故、この店でシャリオを打つ際は、必ず「3000円まで」と上限を
決めていた。いわば「運試し」(それでも、当時の自分には結構な額)。
当たろうが当るまいが、それだけ使ったら、そのシマとは「サヨナラ」。
ただ、結局は他のシマに流れ着いて、さらに傷を広げたりもしたが…。
同店で釘が渋めだったのは、デジパチ(特に、上記した三共の機種)、
一発台、そして権利物。一方、ハネモノやチューリップ台は甘めで、
安銭で終了する甘釘台、或いは遊び台などがゴロゴロしていた。
スロは北電子のレア台が置いてあり、1.5号機「ニューキャスターII」、
2-1号機「ガリバーII」、2-2号機「ガリバースペシャル」を堪能。
(3号機時代は、ノーマルの「スーパーコップ」「アポロン」を設置)
まさに「北電子博物館」。まぁ、「8枚交換」のハンデはあったが…。
私はこの店で、パチンコよりもスロットシマの方が、滞在時間は長い。
因みに、スロは3機種しかないので、バラエティ的設置ではなかった。
さて、ここまで書いて、肝心なフィーバーシャリオの特徴について、
ほとんど触れていない事に気付いた(汗)。以下、項目別に説明。
(1)機種名
「シャリオ」とは、当時生産中だった四輪自動車「三菱シャリオ」に
因んだものと思われる。ご存知の通り、かつて三共は、ドラム機に
人気の「車種」を彷彿とさせるネーミングを、好んで採用。本機も、
同じ流れを汲む。それらをまとめたのが、以下の機種名リスト。
全般的にトヨタが多いが、他社のもある。
・フィーバーエクセレント(旧) ⇒ 日産「サニーエクセレント」
・フィーバーコスモ(旧) ⇒ マツダ「コスモ」
・フィーバーロイヤル(旧) ⇒日産「プリンスロイヤル」
・フィーバークラウン(旧) ⇒ トヨタ「クラウン」
・フィーバーグランデ(旧) ⇒ トヨタ「マークⅡグランデ」
・フィーバーアバンテ(旧) ⇒ トヨタ「チェイサーアバンテ」
・フィーバーレクサス(旧) ⇒ トヨタ「レクサス」
・フィーバーシャリオ(旧) ⇒ 三菱「シャリオ」
・フィーバースピリット(旧) ⇒ 日産「ローレルスピリット」
・フィーバーアリスト(新) ⇒ トヨタ「アリスト」
・CRFウィンダム(新) ⇒ トヨタ「ウィンダム」
など
(旧)=旧要件機 (新)新要件機
(2)スタートチャッカー
本機は、一般的な「デジタル真下のヘソチャッカー」ではなく、
ハネモノでいう「両オトシとヘソ(下段中央)」の計3か所が
始動チャッカーになっていた。かなり変則的な盤面構造である。
左右オトシのゲージはハカマ釘ではなく、チャッカー上部に
バラ釘が多数打たれていて、他機種以上に釘チェックが難しい。
一方のヘソは、ハネモノ同様、チャッカー上部を三角クギがガード。
当然、コチラも正確な釘読みが必要とされた。
とはいえ、件の「ぱちんこ遊園」で、これらの始動チャッカーが
甘く調整されているのを、見た試しがない(ボーダーにも及ばず)。
当然だが、一度も当らず、シマを後にする機会も少なくなかった。
因みに、ここのシャリオもレクサスVも、いつ赴いても、先客はほぼ無し。
同じ頃、駅北口の「パーラーニューギンザ」(現「Ginza P-style」)で
FレクサスVIDのシマが活況を呈していたのとは、いかにも対照的だった。
(3)本機の顔である「ドラム」
(「777」揃いの自作イラスト、再掲)
私が「パチ道」に入った’90年当時、三共ドラム機といえば何といっても
「レクサス」シリーズがその代表格で、いずれも「5ライン機」であった。
だが、レクサスシリーズの後発である本機は、5ラインではなく、
「アバンテ」以前に同社の主流だった「1ライン機」として登場。
これも、当時の流れから見れば、かなり異色だったといえる。
ただ、レクサスから三共ドラム機に初めて縁した私にとっては、
本機のような1ラインドラムが、却って新鮮に映ったのも事実だ。
大当り図柄は、イラストにある「7」などの奇数5通り(1、3、5、7、9)。
また、本機はブランク図柄も味があり、優勝カップ、フラッグ、ヘルメット、
オイルタンク、手袋、靴、時計といったハズレ絵柄が、大当り図柄の間に
配されていた。今にして思えば、件の「三菱シャリオ」の4WDタイプが、
1984年に「ファラオラリー」に参戦、見事クラス優勝を飾っているので、
そんな「ラリー」繋がりの図柄が、ブランクとして描かれたのではないか。
(一方、盤面デザインは「宇宙」をイメージしていて、ラリーとは縁遠い)
通常時、1ラインドラムが「左⇒中⇒右」と回るが、レクサスシリーズと
異なり、左・中で数字がテンパイしても、右ドラムはスローにならず、
高速回転のままビタっと停止。この動きも、「アバンテ」以前の1ライン
ドラム機とほぼ同じである。内部を分解した事が無く断言はできないが、
恐らく、レクサスVから採用された「ステッピングモーター」ではなく、
「カム、レーザー光、透過穴」で判定を行う、旧式のドラムと思われる。
因みに、三共系の「大同」から同時期に出た「フィーバーエリート」も、
同じドラムの動きで、左中テンパイ時に右ドラムはスローにならない。
(4)アタッカー
また、本機は大当り中も、レクサスシリーズと一味も二味も違った動きを見せた。
アタッカーは盤面上(ドラム上部)にあり、レクサスのような「前開き」でなく、
水平に広がる「スライド式」だった。私は、スライドアタッカーのデジパチが
大の好みで、西陣のドット機「ラスベガス」をはじめ、三洋「パニックコスモ」、
マルホン「パールセブン」など、盤面上部で水平ハネがスッと左右に開く台に、
当時ハマっていた。
独特なアタッカーの動きに魅せられたのは勿論だが、ストロークを調節すれば、
水平ハネの先端に当たった玉が、両サイドのオマケチャッカーに流れ易くなり、
ストロークが「ツボ」を突くと、出玉をガッツリ稼げる印象が強かったのだ。
まぁ、これは全てのオマケデジパチに共通の事象だが、スライドアタッカーは、
特にそう思わせる、「何か」があったのだと思う。
上部のスライドハネに拾われた玉は、1ラインドラム真下に設けられた
メイン入賞口に落下。その入賞口の中央が、丁度Vゾーンになっていた。
これも一風変わった構造で、レクサスの定番アタッカーとは対照的だった。
大同「フィーバーエリート」も同じ構造。コチラは本機の兄弟機といえよう。
(5)連チャン性
レクサスシリーズは、朝一単発回し、或いは通常時の単発回しで、
大当り後の保留連が期待できた。また、保留全点灯⇒全消化で、
最後の保留で当った場合、全保留が連チャンするチャンスだった。
一方、シャリオに仕込みの連チャン性は認められず、「確率甘めのノーマル機」
に過ぎなかった。私も「ぱちんこ遊園」で幾度も大当りしたが、保1~保4で
連チャンした経験は皆無。大抵は単発の当りを引いて、即交換していた。また、
運良く継続図柄で当たっても、上皿の玉を打ち込んだら、サッサと引いていた。
故に、本機では大勝ちも無いが、大負けも無い。
まぁ、勝ち易い条件では打っておらず、トータル収支もマイナスだったと思うが、
こうした「まにあっく」なマイナー機と、付き合う機会があっただけでも有り難い。
今後、どなたか奇特な方が、実機動画でもアップして下さらないものか…。
(私自身は、シャリオに関する情報を、こうして残しただけで満足だが)
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フィーバーシャリオI(三共、デジパチ)と戯れた記憶
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