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ドリフに新ギャグを提供?

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今から35、6年くらい前の古い話になるが…

小学校低学年の時分、同じクラスに「N君」という男の子がいた。

背丈はさほど大きくなく、色白で少々ポッチャリ型。性格は温厚だった。
物静かで、運動より勉強が得意。テストは大抵が高得点の秀才タイプだ。

ただ、友達付き合いが苦手な感じで、休み時間も一人ポツンと読書が多かった。
積極的に話しかけても、反応はイマイチ。一緒に遊ぶ友人も少ないようだった。

まぁ、頭は良いが、孤独を好むというか、覇気がないというか、根が暗いというか。

一方、当時の私は、明るさと活発さだけが取り柄で、あまり勉強が好きではなかった。
何よりもまず「遊び」が優先するタイプだったので、当然と言えば当然だが。
(勉学に多くの時間を費やすようになったのは、小6の中学受験がきっかけ)

学校が終わると、近くのグランドや空き地で友達と野球。暗くなるまでひたすら遊んだ。

また、親に小遣いを貰うと、馴染みの駄菓子屋に直行して、少ない予算であれこれ飲み食い。
(赤い汁入りスモモ、プロ野球チップス、ベビースターカップラーメン、マルカワフーセンガム、
キャベツ太郎、アンズジャム、ソースせんべい、コーラ飴、ホームランバーなどが好物)

さらに、探検と称して学区外も頻繁に歩き回り、偶然出会った別の学校の子と仲良くなったり。
(調子に乗って、その子の家に上がり込んで、菓子やジュースを御馳走になる事も…)

ともかく「アクティブさ」「社交性」の面でいえば、人生で最も秀でていた頃だ。

そんな私は、N君の内気な性格が気がかりで、「彼を笑わせて明るくしたい」と常々思っていた。

そこで、何か面白い「一発ギャグ」を彼に披露して、笑いをとってやろうと考えたのだった。

無い知恵を振り絞ってあれこれ考えた結果、こんな一つのギャグを編み出した。

~親指と人差し指を「指鉄砲」の形にして、「デーン!」「デーン!」とN君を撃つ(真似をする)~

たった、これだけである。何とも単純で子供っぽい発想だったが…(子供だから当然か)

これでN君が笑うか大いに不安だったが、「ものは試し」と、次の日の休み時間に作戦を決行。

ただ、一人でやってもインパクトに欠けるので、仲良しの友人2名にも訳を話して協力を仰いだ。

例の如く、教室で読書にふけるN君の不意をつき、「デーン!」「デーン!」と背後から強襲。

最初は、呆気に取られて驚いていただけのN君。だが、コチラが何度も「デーン!」とやると、
次第に笑顔を見せるようになり、遂には「デーン!」とやる度に「アハハッ!」と大きな声で
笑うようになった。

こんなシンプルなギャグでも、彼の笑いの「ツボ」にハマったようだった。作戦は成功である。

その後も、休み時間は勿論、体育の授業中や給食の時間など、何かにつけて「デーン!」を
彼にお見舞いした。当のN君も、それを心底楽しんでいる風に見えた。

この件がきっかけで、N君は次第に性格が明るくなり、クラスの皆とも溶け込んだ訳だが、
結局、学年が上がって別のクラスになってから、理由も知らぬままに転校してしまった。

それから暫く経ったある日、家で大好きなドリフの「8時だよ!全員集合」を観ていると、
番組の前半にやっていた定番の「ドタバタコント」で、こんなシーンに遭遇する。

コントの設定は失念したが、いかりや長介と加藤茶の掛け合いで、何かやりとりがあって、
いかりやが加藤に向って「5秒前、4、3,2,1 デーン!」とカウントダウンの合図を送る。

すると、加藤が最後の「デーン」の声に合わせて、これでもかという「変顔」を披露したのだ。

今まで、全員集合でも「大爆笑」でも見なかった「新ギャグ」に、観客の子供達は大ウケ。
(志村と仲本が謹慎中で「3人構成」という非常時だった為、インパクトも大きかったのだ)

で、その時、いかりやさんが「デーン!」とカトちゃんの顔に向けた指の形が、まさに
人差し指と親指で作る「指鉄砲」そのものであった。
(5、4、3…のカウントダウンで指を一本づつ折り曲げて、最後に指鉄砲を出す流れ)

「デーン!」と「指鉄砲」を組み合わせた新ギャグに、私は笑いよりも「衝撃」を受けた。

「あの時、N君を笑わせた自分の一発ギャグが、ドリフの新ギャグになっている?」

実は、この衝撃には別の「伏線」もあって、N君と同じクラスの時、「彼の父親は、TBSの関係者
らしい」と、誰かが噂していたのを覚えていたのだった。確か、本人にも「真偽」を確認したが、
どうにも要領を得ない感じで、ハッキリとは答えてくれなかった。

そんな事情があったから、この新ギャグをTVで見た私の脳内で、ある「妄想」が一気に駆け巡る。

「N君は私の「指鉄砲ギャグ」をいたく気に入り、自分の家族にも紹介した。すると、TBS勤めで、
しかも「全員集合」の番組制作にも関わっていたN君の父親が「これは」と思って、会議か何かで
いかりやさんに話した所、いかりやさんも気に入って、例の「カトちゃん変顔ギャグ」にアレンジ
したんじゃなかろうか…」

とまぁ、こんな感じである。「するとN君の転校も、人気番組に携わってTVの仕事が忙しい
彼の父親が、職場に近い都内の一等地に新居でも構えたのか…」と、妄想は止まらなくなる。

そのN君とは、もう35年以上も音信普通の為、事の真相を突き止めるのは、恐らく無理だろう。
彼の父親がTBSの関係者かどうかも、ましてや、ドリフの番組制作に関わっていたかどうかも、
憶測の域を出ないので全く判らない。したがって、私がN君に「デーン!」のギャグを披露した
時期と、その後ドリフの新ギャグが誕生した時期が、たまたまカブッただけの可能性だってある。
いや、むしろ、そう考える方が自然なのかもしれない。

ただ、あの絶妙なタイミングでドリフが新ギャグを出した事(これは、3人体制で持たせる為、
いかりやさんが急遽編み出したギャグ、とする説が有力だが、それだけに、色んな関係者から
ネタの材料を探っていた可能性もある)、しかも指鉄砲の時よく使う「バーン」「バキューン」
ではなく、あえて「デーン!」という独特の擬音を使った事が、単なる偶然以上の「何か」を
私に感じさせたのだった。

ひょっとすると、いかりや+カトちゃんの合作「5秒前、4、3、2、1、デーン」は、私がN君に
見せたあの一発ギャグが元ネタになっていたのかも…そんな子供時代の下らぬ妄想を
思い返すと、大人ながらにワクワクする。ただ、それだけの、他愛ない昔話である。


(「ドリフに新ギャグを提供?」の項、了)


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