1992年(平成4年)にマルホンから登場した
現金機デジパチ「ピンクレディー」について。
(基本スペック、実戦店)
★賞球:7&15
★大当り確率:1/235
★大当り図柄:0~9、A、H、Pの各三つ揃い(13通り)
★デジタル停止順:左⇒右⇒中
★最高16ラウンド継続
★出玉:約2300個
★連チャン性:アリ(保4連、連チャン率:約15%)
★当時の実戦店:新宿西口「ジャンボ」、渋谷「日拓」など
1991年(平成3年)の新要件初期におけるマルホンデジパチというと、
小デジ確変機能付「ウルトラセブン」に代表されるようなドラム機と、
「スーパーダイヤ」「ウィンク」などに見られる巨大な7セグ(LED)
デジタルという「二大柱」が主流であった。特に後者は、デジタル部が
リーチ中に後方傾斜したり(ウィンクなど)、デジタルの円形ヤクモノ
全体がリーチ時にグルリと大回転したりと(リバース2、リバースセブン
など)、何かと趣向を凝らしたタイプが多かった。また、どのタイプも
けたたましいサウンドや派手なランプの点滅など、視覚・聴覚に激しく
うったえるものが大半を占めた。この「マルホンデジパチ二大路線」は
91年新要件に始まった事ではなく、ドラムは旧要件機「クールセブン」
「スーパーターボ」など、7セグは同じく旧要件機の「パールセブン」
「オリンパス2」「キャスター」「ロータリーセブン」などの流れを
受けたものである。派手な効果音やランプ点滅も、旧要件マルホンの
「伝統」を引き継いでいた。
その後、平和「麻雀物語」の大ヒットに呼応するかのように、1992年には
カラー液晶モニタを採用した「スーパービジョン」や「ゴールドビジョン」
「カラービジョン」といった液晶デジパチを相次ぎリリース(発色や彩色は
かなり派手だったが、図柄の形状はカラー液晶を使った割にはシンプルとも
思える、7セグ調のデザインだった)。
マルホン「スーパービジョン」のデジタル画面
一方、権利モノにおいては、92年に「フォーミュラー」「ミラクルショット」
「ウィンダムX(Z)」「マジカル」「キングM」などのドットデジタル機が
続々と発売された。「権利モノ=ドット」の流れは、その後も「ダブルゲーム」
「びっくりマン」「チャイナタウン」「ソルジャー」など同社の爆連権利モノに
継承された。なお、デジパチにおいても「ミステリーハウス」や「サイドセブン」
「ロックンビート」「マンボウくん」など、この時代にはドットデジタルモノが
多数存在。やはり旧要件「レーサー2」「パーラー2」といったドットデジパチの
「系譜」といえるが、ドットのデザインは大きく進化。また、7セグやドラムと
比べて、ドットはマルホン新要件初期の主流とはいえなかったから、1992年を
契機として、「マルホンドット路線」が一気に開花したことになる。
一方で、従来のデカデジ路線には多少の変更も加えられ、デジタルのサイズを
やや小さくする代わりに、分離・独立した各デジタルが、従来よりも立体的で
派手なアクションを行う機種が数多く出始めた。やはり1992年に発売された
「アクションズーム」「ハッピーズーム」「スーパーズーム」そして今回紹介
する「ピンクレディー」などの7セグ(LED)各機種は、その代表格といえる
「セーフティーセブン」「サイドワインダー」なども同タイプの7セグ採用)。
それまでの新要件マルホン7セグ台は、デジタルのヤクモノの動きに特徴が
あるタイプが多かったとはいっても、大きな7セグ自体は似たり寄ったりの
感もあり、新台リリースされる度に「ワンパターン」とか「二番煎じ」など
批判されたりもした。そんなマンネリを払拭すべく、デジタルサイズよりも
ヤクモノとしてのデジタルアクションに重きを置いたのが、’92年における
同社の路線変更の特色とはいえまいか。
当時のマルホンデジパチは、世の「連チャンブーム」の勢いを多分に受けて、
仕組まれた連チャン、とりわけ保4の意図的な連が仕込まれた機種が少なく
なかった。上述した「スーパービジョン」「ハッピーズーム」「アクション
ズーム」は、何れも保4連率25%以上を誇る、強力な保留連チャン機だった
(それゆえ「販売自粛」という憂き目にもあった訳だが…)。本機も、その
流れを汲む保4連を特徴とするが、連チャン率は先行機よりもトーンダウン、
約15%に抑えられていた。それでも、初当り約7回に1度の割合でダブルが
期待できた訳で、時にはトリプル、フォース…と伸びるケースもあったから、
当人のヒキ次第で短時間の箱積みも可能なスペックといえた。
ところで、今さらながら本機の「盤面」に注目すると、最上部に横書きされた
「ようこそ いらっしゃいませ♥」のメッセージや、その左横に描かれている
メイドチックな若い女性二人組のイラスト、さらにデジタル下の両サイドに
佇むビキニのギャル(コチラもペア)が、存在感を強烈にアピールしていた。
機種名の「ピンクレディー」は、今さら説明するまでも無い事だが、70年代
大活躍した人気アイドルデュオの名前と同一だったから(⇒正確に言うなら、
アイドルの方は「ピンク・レディー」とセンターに「中黒」が存在したが…)、
ビキニのイラストなどはその象徴といえる(タイアップ機ではなかったハズ
だが)。また、メイド姿のイラストも、件のアイドルデュオが70年代に出演
したグリコ「ラブリーチョコ」のCMで着用した衣装が、ちょうど似たような
イメージの「萌え系」(←今風の表現を使うなら)コスチュームだったので、
そのCMを意識したイラストだった可能性はあろう。さらに、1990年代前半、
可愛らしいメイドの衣装に身を包んだ女性店員が特徴の、「アンナミラーズ」
という飲食チェーン店が男性客にウケて大流行していた。そんな時代背景が、
件のイラストに影響を与えたかもしれない。
但し、本機には、上掲の盤面と大きく異なる「セル違い」も存在した。コチラは
アイドルとか萌え系と縁遠い感じの、どちらかといえば地味でオーソドックスな
デザインだった。ホール側の嗜好に応え易いよう、メーカーがあらかじめ複数の
セルを用意していたという事か。実際、このセル違いは販売好調で「新セル」と
して出た訳ではなく、発売開始の段階から両方のセルが発表されていた。まぁ、
関東⇔関西など、エリア別に異なるセルを導入する予定だったかもしれないが…。
マルホン「ピンクレディー」(セル違い)
続いて本機のデジタルの動きについて説明すると、左、中、右とそれぞれ
分離独立して透明のプラケースに収まった立体的な7セグデジタルは、左⇒
右⇒中の順で停止。左右がテンパイすると、左右デジタルは後方に下がり、
横向きでギュイギュイと半回転を開始する。「振動アクション」とも表現
できる個性的な往復運動で打ち手を煽った。同時に、中デジは横回転では
なく「前後動」を繰り返して図柄がスクロール。この「縦横」の立体的で
奥行ある動きが特徴だった。また、同社お得意の「キンキンサウンド」も
健在で、リーチ時はシマ中に甲高い効果音が響き渡った。SPリーチは存在
しないが、リーチそのものがド派手でスペシャルな扱いだったといえよう。
大当り中も、左右デジタルと中デジタルが交互に前後動を行ったりして、
打ち手を魅了。その大当り後には保4連の期待…となれば、テンションが
上がらないハズがなかった。スーパービジョンほど露骨な保連はなかった
ものの、「1/235」という初当り確率にしては、そこそこの連をカマして
くれた記憶も残る。
保4連チャンの詳細なシステムは、残念ながら当方把握していない。ただ、
当時のマルホン連チャンデジパチが軒並み保4連を特徴とした事から見て、
各機種とも共通のプログラムを使っていた可能性がある。一例を挙げれば、
大当り消化中、ある契機で保4乱数が大当り値に強制的に書き換えられる、
典型的な「上書き連チャン」方式だったかもしれない。なお、大当り確率が
同じ1/235の「スーパービジョン」は一発判定方式を採用しており、本機も
これと同じ抽選プログラムだった可能性は否定できない。この点、引き続き
調査検証を継ける。
なお、本機は連続回転中に限って、通常時の左デジタルに移行法則が存在。
前回停止の左出目に対して、次回左出目が同一か+1コマor+2コマで停止
する特性があった。連続回転させてこの法則が崩れた場合、大当りが確定。
地味だが、確実な大当り判別法といえた。
平和「ブラボーキングダム」「ブラボーミリオンSP」、SANKYO「フィーバー
レジェンドI」「フィーバーパワフルIII」、西陣「花鳥風月」「パーラーキング」、
太陽電子「ファンタジーセブン」、豊丸「王将百番」「ピカイチ天国」など、
各メーカーとも「華」のある連チャンデジパチを多数送り出していた時期。
それだけに、同時期リリースされた本機の存在感が希釈化されてしまった感は
否めない。ただ、あらためて振り返ると、本機をはじめ、この時代のマルホン
デジパチには独特な魅力を感じる隠れた名機が意外に多く、「もっと打ち込んで
おけば…」と、個人的に悔やむ機会も多い。発売から35年経ってのレビューだが、
記事を通して、味わい満点だった90年代前半のマルホンに想いを馳せて頂けたら
有難い限りだ。
(マルホン「ピンクレディー」の項、了)