レトロパチンコ・ビデオアーカイブス
「マル秘パチンコ攻略ビデオ(Vol.3)」
(製作:双葉社 編著:テン・オクロック工房)
(1989年1月リリース、定価2300円、VHS45分)
主力パチンコ攻略誌の1つ「パチンコ攻略マガジン」に登場した名釘師・雪本氏と、同誌専属のパチプロ・田中勝男氏を映像で紹介した、平成初期の貴重なビデオ作品。
他にも、人気台「シャトル21」と「ニュービッグセブンP4」を特集している。
雪本氏は、当時「秘伝・釘師養成講座」を同誌にて執筆。また、現場での奮闘をルポライター・神山典士氏がドキュメント風に描いた「流れに掉さして」も、その後連載された。
一方、田中氏は「常に勝ち続けるパチプロ」として、同誌を通じて有名に(それゆえ「非現実的」との批判も多かった)。「パンチパーマにグラサン」という独特の風貌は、インパクト十分。また、プロとしての自身の歩みを記した連載記事「パチプロ・田中勝男」も好評だった。後に、自身が現在喰っている機種を紹介する、「田中勝男・パチンコを斬る」も連載された。
そういえば、当時の攻略誌では、こういった「オヤジ」達が妙に元気だったな。ライバル誌の「パチンコ必勝ガイド」でも、編集長・末井昭を筆頭に、「パチプロ日記」の田山幸憲、銀玉親方こと山崎一夫、解析師の下田一仁、ボーダー理論の石橋達也、コラム連載の蛭子能収や南伸坊(全て敬称略)といった「アクの強い」オッサン連中が、誌面に活気を与えていた。因みに、ガイドの名物ライター「パチプロ負男」氏は、もともと田中氏の「パロディ」として誌面に登場した。
まぁ、それはともかくとして・・・本作の主な内容は、以下の通り。
(1)雪本氏に密着(最後の釘師、釘師歴28年(当時))
・午前二時。雨の降りしきる中、自身の駆る車で、受け持ちのホールに向かう。
・到着したのは、和歌山「キングホール」。閉店後、無人の店内。
・雪本氏は、数少ない「回り釘師」(一晩で何店舗ものクギを打つ)の一人。
・受け持つホールは、現在6か所(関西一円・・・大阪、和歌山、兵庫)。
・前日の売り上げデータを見て、アケシメする台を決める。
・一台当たりのクギ調整時間は、僅か20~30秒。
・1ホールにつき、仕事は1時間で完了して、次のホールに向かう(終了時は明け方)。
・ホール経営者が指示した割数通りに調整。コンマ何ミリを打ち分ける芸術的なクギ捌き。
(以下、雪本氏にインタビュー)
・釘師になったきっかけ…もともと官庁仕事をしていたが、性に合わず脱サラ。その後、縁あってパチンコ業界へ飛び込む。「アゴ付き・宿付き」(衣食住に困らない)世界なので、次の仕事が決まるまでの「つなぎ」のつもりだったが、本業になってしまった(笑)。
・釘師の妙味(面白み)とは…ガチ締め、ダダ漏れの台なら誰でも調整できる。「打ち手によって、取ったり取れなかったり」という、いわば「限界線」までクギを持っていくことこそ、釘師の妙味だ。
それでも、シマによって「狙い通り」と感じる事もあれば、出過ぎて「しまった」と悔やむ事もある。痛快なのは、一発台で命釘をガバッと大きく開けておき、反対側から抜ける(騙し)クギを作り、お客が喜んで打った後「しまった」と、顔色を七面鳥のように変えた時(笑)。
・思い出に残るパチプロ…20年前、大阪に「ハット」と呼ばれる中折れ帽を被ったプロがいた。大半の釘師がその腕に泣かされたが、彼は非常に「紳士」で、遊技中は他の客に一切迷惑を掛けなかった。その頃から、こういう紳士的なプロは、出ている事を宣伝してくれる「必要悪」と考えるようになった。
・ゴト師について…そうしたプロよりも困るのはゴト師。大別すれば、シャク師(磁石)、ピアノ線、セル、ゴキ(ガラスを釘に押し付けて玉を絡み易くする)。磁石やピアノ線は注意すれば判るが、セル使いには気付きにくい。透明な薄いフィルムを台に差し入れ、受け口にして玉を流す。
※註※
ゴト師には、「電波」や「合鍵」を使うタイプもいたが、ここでは触れず。また、セルの使い方には、台裏にセルを差しこんで一発台のチューリップを開ける方法や、ハネやアタッカーにセルを引っかけて、開けっ放しにする方法などもあった。
(釘師のテクニック)
・(三共「大相撲II」の盤面で解説)スライド式ハネの上にある一本クギを外に振れば、玉はハネに寄り易くなり、内側へ叩けばハネから逃げる。これが基本だが、あえてハネ上をプラスに調整して、代わりに谷釘や山釘を外側に叩き、玉を寄りにくくする調整(ダマシ)もある。
・(平和「ビッグシューター」の盤面で解説)役物脇のヨロイ釘がプラス調整だと、一見玉が寄り易いので良さげに見えるが、実際は盤面中央に流れ過ぎて、左右オトシ(ハカマ)に絡まない。但し、センターに流れる分、2チャッカーには入り易いので、ヘソを調整し損なうと大変。ヘソを殺すには、ヤクモノ左右下の誘導クギを内向きにしたり、センターの三角釘をシメればよい。
・(ホールでのクギ調整について)動かすクギは、一台につき4~6本。総数の二割程度を調整。取られるクギばかり作っては、客が打たない。釘師の必要性も、まさにそこにある。良く言えば「演出家」だが、悪く言えば、いつも人を騙している「大ダヌキ」だ(笑)。
★映像中、雪本氏がクギを叩いたハネモノ…弁慶(西陣)、スパンキー(平和)、ビッグシューター(平和)、大相撲II(三共)など。
(2)無敵のパチプロ・田中勝男氏にインタビュー
・取材店…兵庫県「川西エース」
・パチプロ歴13年。その間、「一度も負けることなく」現在に至る。(←怪しい)
・オーソドックスなハネモノ専門(取材当時)。⇒後に、デジパチや一発台も打つ。
(以下、田中氏インタビュー)
・プロとアマの違い…アマは釘が判らず、打つポイント(ストローク)を知らない。釘師が調整した「終了できる条件を備えた台」を見抜くのがプロで、何も判らずに打つのがアマ。
プロといっても、どんな台でも終了できる訳ではない。山釘、谷釘、寄釘、バラ釘、道釘、命釘…条件は幾つもある。その条件の揃った台を打てば、素人でも勝てる。それを確実に見抜くのがプロ。
(釘読みの技術について…平和「ビッグシューター」の盤面で解説)
(最初の台)この台は、左風車上の一本釘が左向きで、非常に寄りが良い。ヘソも広いが、ヘソ上部の道クギと三角釘が締まっており、打つべきではない。
(二台目)今度は左風車上のクギが右向きで、寄りが悪い。ヘソ上の道釘は良いが、命釘が締まっている。やはり、打ってはいけない部類の台。
(三台目)ヘソ上の道釘は良いが、肝心の命釘が狭い。また、役物左右下の誘導釘が内向きで、センターに玉が向かいづらい。敬遠した方が無難。
(四台目)これは良さそうな台。山釘・谷釘が広く、風車上の一本釘も左向きで、玉が寄り易い。オトシも、ハカマと命釘にズレがない。ヘソも誘導クギがプラス調整で、道釘もよく命釘も広い。打てば、百人中百人が終了可能な調整だろう。
(「では、早速打って貰いましょう」と)打ち始めると、速攻・最初のナキでV入賞。(←デキすぎ)
(再びインタビュー)
好きな機種は?…好き嫌いではなく、今やっているのが、スーパーブラザース(西陣)、大工さん(西陣)、それとファクトリー(平和)。その三台を主にやって稼いでいます。
これからのパチプロはどうなるか?…多分、苦しくなるんやないかね。知り合いのパチプロも、年々減っていくし。新台の出るペースも速くて、クギを覚えるのが追い付かない。8割方が開店プロになったり、(プロを)ヤメたりしている。
普通の人は二日勝って一日負けても納得いくが、プロが2勝1敗では食っていけない。二日で二万円勝っても、三日目に一万負けたら、三日で差引き一万円の収入にしかならない。たとえ少しづつでも、(毎日)勝ち続けていくのがパチプロだろう。
ワンポイントアドバイスを…親切な釘師のいる店、割数の高い店を探す事だ。出す時には出す店ならば、一般客でも楽しめる。欲を言えば、「一流の釘師」がいる店。プロの仕事も、八割がたが「良い店を探す事」に費やしている面がある。
パチプロになるきっかけ…やっぱり不真面目だから(笑)。これまで、何人も若い人が「パチプロになりたい」と私のもとに来て、色々と教えたが、最後は十人が十人とも「普通の仕事がいい」とヤメていった。そういう意味で、ボクは相当の不真面目だと思う(笑)。
※後半では、(A)「シャトル21」(藤商事、アレパチ)の攻略法(というか遊技法)、(B)「ニュービッグセブンP4」(大一、デジパチ)の解析(乱数システム)及び体感器攻略(乱数移行パターンを用いた、大当り直撃)を紹介。