1994年(平成6年)に平和から登場した新要件ハネモノ「おむすびくん」。
当時、パチでは、同じ平和の「CR名画」なんかが出たばかりで、これが面白くて結構ハマっていた(西武新宿駅前「日拓」など)。ただ、名画は初当り確率が1/360と低く、幾ら追ってもサッパリ当たらない、ドツボの展開に見舞われたりもした。
そんな時、確率の甘いノーマルデジパチ(大同「フィーバールーセントDI」や三共「フィーバービューティフルII」など)に逃げたりもしたが、もっと安ゼニで勝負できるハネモノの本機を、やはり新宿の「アラジン」(現存)で打ったりした。
(’94年頃の新宿「アラジン」の様子…日拓は歌舞伎町だが、こちらは西口ヨドバシ本店界隈。この時期、アラジンの近くでは、スロ専「NASA」「マーブル」「遊」の3店舗も営業中だったが、いずれも既にクローズ。)
ご覧の通り、本機のモチーフは、「おにぎり」…というか、「おむすび」である。
「おにぎり」よりも、「おむすび」と言った方が、何となく「愛嬌」が感じられる。
小さなノリを頭に巻いた、三角の「おむすびくん」が、ヤクモノ内にデンと大きく構えていた。
なりはデカイが、表情はちょっと弱気で、頼りなさそうに見えた。手足も生えていたが、チープな作りで、ユルユル感満載のキャラだった。但し、おむすびくんの「両足」の動きが、ゲーム性に大きな影響を与えた。
「食べ物」がモチーフのハネモノは、過去にも色々出ていた(京楽寿司、すし五郎、ベーカリー、たぬき丼、タコヤキSP、いらっしゃいetc)。また、「料理」のカテゴリーに広げれば、「スーパーシェフEX」や「棒々鶏(バンバンジー)」なども存在した。
だが、本機の如く、食べ物自体を「擬人化」して、ヤクモノのメインキャラに据えたハネモノは、意外と珍しい。
遊技中、スランプに捕まりイライラしても(「クセ」の悪いおむすびくんも、結構いた)、トボけた表情のキャラと目が合った途端に、何だか憎めなくなってしまう…そんな「脱力系」の(神保隊長風にいえば「トホホな」)ハネモノだった。
まぁ、おむすびは、日本伝統の「ソウルフード」な訳だし、本機に愛着を抱くのも自然だろう。
盤面に描かれた「おむすびキャラ」達のセリフも、実にコミカルだ。いかにも酸っぱそうな表情で「梅ー ウメー」とか、パラソル片手に「おいら OMUSUBI KUNです よろしく お願いします」とか、スーパーマンのポーズで「私は 空飛ぶ おむすび へへ!!」とか、いきなり英語で「GOGO I LOVE YOU」など、どれもこれも「ユルキャラ」揃い。
また、盤面には「炊飯器」のキャラもいて、「私が炊いたのに 主役とって!!」と、脇役扱いに不満タラタラである。何ともユニークな盤面であった。
賞球数は「6&10&12」と変則的。左右オトシとセンターのチャッカーが「6個戻し」で、ヤクモノ内が「12個戻し」、その他が「10個戻し」となっていた。
最高継続ラウンド数は8回又は15回。初当りした瞬間、ヤクモノ上の2ケタデジタルで決定。そう、本機は「デジタル搭載型」のハネモノである。
デジタルの出目は、「00」~「99」の10通り。左右ゾロ目で同時回転する為、1ケタデジタルと同じ。
「77」が出れば、最高15ラウンド継続。その他の数字だと、最高8ラウンド。デジタルによる「ラウンド振り分けタイプ」だが、通常の当りでも8ラウンドなので、77が出なくても打ち止めが狙えた。
露骨にデジタルの連チャンを見せた「たぬ吉くん2」などと違って、「77」の出現率は、他の数字と同じ「1/10」である。意図的な連続性はないが、自力で77が続くことはあった。
やはり、前年(1993年)11月に起きた「ダービー物語事件」を契機に、露骨な「連チャン規制」の流れに向かっていた事が、かなり影響したと思われる。しかも、そのダービー事件で標的にされたのが、まさに「平和」であった。出来るだけ、「お上」に目を付けられない、穏やかな機種をリリースしても、仕方ないだろう。
ハネ開閉時間は、左右オトシ(1チャッカー)が0.5秒、ヘソ(センター、2チャッカー)が0.7秒×2となっている。
ハネに拾われた玉は、上段奥から、おむすびくんの左右の腕伝いに落下する。そのまま、下段ステージ両サイドの穴から出ると、おむすびくんの前を通って、手前V方向にアプローチする。
但し、ハネ開閉とほぼ同時に、おむすびくんの「両足」が作動を開始。おむすびくんの前に転がって来た玉を、巧みに「ブロック」してしまう。これが、V入賞率を低下させる要因であった。
それでも、ヤクモノ内の玉に勢い(スピード)があり、下段で角度良く転がれば、両足のブロックをかわして、Vに飛びこむ事があった。また、下段に来るタイミングが丁度いいと、足に当った玉が手前に転がって、そのままVに入ったりした。さらに、複数の玉がヤクモノに入れば、玉突きした玉がVを射止めるチャンスも生まれた。
但し、V入賞率は、台の「ネカセ」や「クセ」によって、大きく変わった。両足のブロックが苦手なおむすびくんは、「甘塩で食べやすい」お宝台。逆に、ヤクモノ内でハズレまくりの、「塩辛い(=しょっぱい)」おむすびくんもいた。もちろん、シマに足繁く通い、各台の特徴を押えておけば、立ち回る上でも有利になった。
大当りすると、下段ステージに通じる左右穴にストッパーがかかって、おむすびくんの両脇に、最大「3個」づつ貯留を行う。但し、片側3個の貯留が満タンになると、後続の玉は貯留されず、下段ステージにこぼれ落ちる(大抵はハズレ)。
なお、おむすびくんの足は、ラウンド開始当初は動いているが、ヤクモノ5カウント後、又はハネ10回開閉後に静止する。
その後、ヤクモノ10カウント又はハネ18回開閉で、貯留は一気に解除。左右3個づつの貯留があれば、V継続は容易だ(たまに、貯留玉同士の玉突きや、貯留不足でパンクしたが…)。
平均貯留個数も多く、貯留解除タイミングも遅かったので、出玉はそれほど悪くない。「77」が出て15ラウンド完走すれば約1300個、8ラウンド完走時は約700個が望めた。
さらに、デジタルに最高15ラウンド継続の「77」が出た時は、大当り後に「お楽しみ」があった。
それは、「77」で大当りした後は、おむすびくんの足の動きが変化する、という事である。
先述の通り、通常時は、ハネが開き始めるとほぼ同時に、おむすびくんの両足が作動を開始。この足が、下段に来た玉をブロックしてしまい、V入賞率を下げていた。
だが、「77」で当った後に限っては、おむすびくんの足が動き始めるタイミングが、通常よりも遅くなるのだ(ハネが完全に開ききってから、足が動き出す)。
その為、ヤクモノに入った玉は、足のブロックを受ける前に、下段ステージの手前を通過する機会が増える。これで、V入賞率は通常より大幅にアップした。
つまり、「77」が出た後は、次の大当り獲得が容易となっていた。これを「連チャン」とすれば、本機にも連チャン性があったといえる。但し、デジタルではなく、あくまでも、ヤクモノの特性を利用した、「疑似連チャン」である。
それでも、大量出玉獲得後、さらなる大当りチャンスが待っているのが、何とも嬉しかった。
なお、77が出て15ラウンド完走せず、途中でパンクしても、大当り後、足の動きは変化する。
当初は、こうした特性を知らない客もいたので、「77」のままヤメた台をハイエナ出来た(出目が「77」だから、すぐ判る)。但し、ナキも寄りも激悪な台で、たまたま「77」が出たような場合、次回の大当りに苦労させられた。
★クリームネタ
なお、本機のV確率をアップさせる為、「ハンドクリーム」を使う方法があった。
ただ、私から言わせれば、これは、「ゴト行為」と大差ないものだ。
以前にも、例えば、豊丸の一般電役「アメリカンドリーム」で、飴玉やグリースでベタベタさせた手で玉を握ってからヤクモノに入れると、ヤクモノ内の玉の動きが変わって、大当りし易くなる手口があった。
しかし、これらは正攻法と程遠いやり口で、台の劣化・故障にも繋がる。たとえ、どれだけ多くの玉を出したとしても、褒められたものではないし、評価する気もない。
そもそも、ハンドクリームをベタベタ塗りたくった手で、おむすびを握ったり食べたりするのは、衛生上、大いに問題があろう。やはり、おむすびならば、「塩」を使うべきだ(笑)。
★おまけのネタ★
・機種名の「おむすびくん」を、豪快に間違えた、某・攻略誌(1994年某月)。
単なる「誤植」というより、担当者の明らかな「勘違い」だろう。どうして、こうなった…(汗)
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おむすびくん(平和、ハネモノ)
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