前記事に続いて、過去の「旅打ち」での、他愛ない思い出話などを…
「一期一会」(いちごいちえ)…一生にたった一度だけの、大変貴重な出会い。
唐突な出だしで恐縮だが、この言葉を聞くと、私には、真っ先にピンとくる台がある。
それは、当時、マイナーメーカーだったエマから出た、マイナー4号機「ディーゾーン」だ。
(こう「マイナー、マイナー」と繰り返しては、エマの熱烈なファンから怒られそうだが)
ディーゾーン(D-ZONE)
(エマ、4号機、1999年リリース)
BIG REG
1/298 1/661
1/280 1/661
1/260 1/661
1/246 1/578
1/237 1/486
1/237 1/356
恥ずかしながら、私が本機と対戦した機会は、たった1回きりしかない。
チェリーの形を暗記するほど打ち込んだフリークの方は、「何だ、その程度でこの台を語るな」と、感情を害されるかもしれない。至極、もっともな話だ。
ただ、その1回限りの実戦が、私にとっては大いに「刺さる」ものであり、鮮烈な印象を残した。
今回は、その時の体験談を、少々お話ししたい。
15年前の2000年(平成12年)5月、私はゴールデンウィークの休みを利用して、パチンコのメッカ、名古屋に遠征した。
もちろん、単なる旅行ではなく、遠征先のパチ屋、スロ屋での「旅打ち」が、主たる目的だ。
名古屋には、それ以前に二度ほど訪れた事があって、拠点となる宿は、同じビジネスホテルにいつも決めていた。JR名古屋駅・太閤口(新幹線口)近くにある、「名古屋リバティーホテル」と「名古屋フラワーホテル」である。
この時は、5月4日~6日の「2泊3日」で遠征を計画。宿泊先は、「駅の真横」という好立地で便利な「フラワーホテル」であった(リバティホテルは、駅からチョイ離れている)。
遠征初日は、手近な場所で楽しもうと、ホテル近辺のパチ屋・スロ屋で実戦を行った。ホテルから歩いて数秒の「スロットピーチ」や、ターミナル前の老舗「太陽」、さらに、「ウィングレット」「ジャンボ」「ニューひかり」など、太閤口に点在するホールをハシゴした。
この日は、朝から「ウィングレット」の地下で沖スロ「シオサイ30」を打ち、そこそこの額の勝ちを拾った後、他の店のパチやスロを、アレコレ「つまみ食い」したハズだ。
(ウィングレットのシオサイは、何かと収支に貢献してくれた)
「ニューひかり」では、バークレスト4号機「プレリュード2」を打った事が印象に残る。その傍の「太陽」では、デジパチのシマに初期・新要件機「リバティIII」(奥村)が置いてあり、懐かしさと共に実戦。
勝負終わりには、名古屋駅地下街の一角にて、「ひつまぶし」を食べた事も思い出す(店員のオバさんが、正しい食べ方をレクチャーしてくれた)。過去の名古屋遠征では、「コンビニ食」がメインで、地元の名物を堪能できなかったから、「ひつまぶし初体験」は、それなりに感動した。
続く二日目は、最初、「ウィングレット」でシオサイ30を打ったが、あまり調子が芳しくなかった。その後、他店に移動してみてが、どうにもヒキが悪く、結果はサッパリだった。
そんな状況になった時、「せっかく名古屋まで来て、ずっと同じ場所で停泊しているのも、何かつまらないな…」と感じて、夕刻、名古屋駅からの移動を決意する。
ただ、過去の名古屋遠征では、ほとんど名駅周辺で打っていたので、他のエリアの土地勘は、全く無かった。
なので、とりあえず路線図で適当なエリアを選び、そこで、行き当たりばったりのパチ屋探しをする事にした。この「行き当たりばったり」も、私の旅打ちにおける「キーワード」だ。
手始めに移動したのは、名古屋有数の繁華街、「栄」であった。名駅から、市営地下鉄の東山線で栄駅に出ると、多くの店舗が居並ぶ地下街を歩いた。まず腹ごしらえという事で、地下で見つけた食堂で、名古屋名物「味噌カツ定食」を注文。確かに美味かったが、ちょっと値段が高いと感じた。
食事後、地下街から地上に出て、多くの人でごった返す栄の繁華街を探索。予想通り、多くのパチ屋・スロ屋に出くわしたが、あまり触手は動かず、どの店も「チラ見」程度で終わった。
やはり、ゴールデンウィーク真っ只中という事で、どこもかしこも客が多すぎて、空き台探しがままならない状況だった。しかも、太閤口で負けていた事もあり、適当な台で勝負する勇気はなく、加えて設置機種のラインナップも、今一つグッとこなかった。
結局、栄での実戦は諦めて、再移動を決意する。正直、他の目的地はなかったが、地下鉄の経路図をジッと眺めつつ、栄駅の近くで複数の鉄道が乗り入れる、ターミナル駅を探した。
すると、さほど遠くない位置に、「金山」という駅を発見。どんな場所か皆目判らなかったが、JR・私鉄・地下鉄が乗り入れる大きな駅なので、パチ屋も多いだろうと考えた。
栄から、地下鉄・名城線に乗り込んで、お目当ての金山駅で下車。外に出てみると、いきなり、大通り沿いに大きなパチ屋があった。看板には「京楽会館」とある。旅打ちで、初めてメーカー直営店らしき大型店舗を見つけて、「本場の名古屋に来たんだな…」と実感した。
ただ、この店でも打ちたい台は見当たらず、さらに駅周辺を色々と歩き周り、幾つかホールを覗いてみたが、栄と同様に、設置や出玉の状況に、グッと来る事はなかった。
「このエリアも微妙っぽいし、早いとこ、名古屋駅に戻ろう」と思いつつ、最後に、一軒のパチ屋へ足を踏み入れた。
しかし、この店で、まさに「運命の出会い」が待っていたのだ。
駅から少し歩いた広い通り沿いに、「某店」(設置機種がアレな為、実名は伏せる)はあった。大きい雑居ビルに入っている店舗で、上階にはカプセルホテルやサウナもある。
私自身、こういう雰囲気のパチ屋が大好きだったから、自然と店内に引き込まれた。
中に入ると、スロのシマの一角に、ちょっと見慣れない台を発見。それが、コイツだった。
ブルーの独特な筐体に、一クセも二クセもありそうな、いかつい表情のサメ。
機種名にしたって、いかにも怪しげだ。D-ZONE?「D」って何だ?Dangerって事か?
この台、地元でも、職場近くでも見た事はなく、攻略誌で見たかどうかも、あやふやだった。
しかし、筐体からは、コチラを惹きつける、独特の「引力」めいたものを感じる。
しかも、その雰囲気たるや、どうみても、「アレ」な出方をするヤツだ。
あいにく、ディーゾーンのシマはガラガラで、爆裂中の客の姿もない。常連風のオッチャンが、2名ほど現金投資中。あとは、水商売風の綺麗なお姉さんが、一人黙々と打っているだけだ。
他のシマには結構な客がついているのに、ディーゾーンのシマだけは、何故か活気が無い。
データランプをみると、ゲーム数表示と、当日のビッグ、レギュラー回数が表示される。だが、目を疑うボーナス回数の台はない。まぁ、稼働がイマイチなので、仕方ない。しかし、総ゲーム数がチェックできないのが、何とも残念(「アレ」の判断には、大いに役立つのに…)。
こうしたシマの状況を見る限り、眼前に佇むディーゾーンの「性格」を判断するのは、いかにも難しく思えた。
それでも、せっかく出会った台、しかも興味を引くマイナー機。ともかく3000円くらいは打っておこうと、弱気にペシペシ打ち始める。3000円で何も来なかったら、とっとと諦めて太閤口に帰ろうか…。
筐体をよくみると、ボタンやレバーや下パネル辺りが、デコボコ、ザラザラしている。この妙な「突起」は、もしかして「サメ肌」を意識したものだろうか?触ってみると、ちょっと気持ちいい。
そうこうするうちに、あっけなく3000円はノマれてしまった。時折、「WARNING」と書かれたリール窓上の文字ランプが光るが、ボーナスが入っている様子はない。赤7もサメの図柄も、実に「香ばしい」フォルムで、一度は揃えてみたい。しかし、旅打ちでの大負けも怖い。ここは、今日のヒキの弱さを認めて、潔く引くべきだろう。
そう思って、「さて、帰るか…」と席を立ちかけた時、近くで明らかな「異変」を感じた。
三台隣りで打っていた「おミズ系」の女性は、さっき、ビッグボーナスが始まったばかり。「彼女のビッグ後の挙動を見れば、台の特徴が判るかも…」と、ビッグの消化を横目でチラチラ見ていたのだが…。
あろう事か、このお姉さん、ビッグボーナスが終わるや否や、速攻でクレジットを全部落として、1回転もさせずに、そのままヤメて帰ってしまったのだ。しばし唖然、茫然である。
ノーマル台なら有り得る展開だが、自分の頭の中では、すでに「この台は『アレ』なヤツ」という期待感で満ちていた。そんな台が、「ビッグ後0回転」で、目の前でポイッと捨てられたのだ。
あのお姉さんは、時間切れでやむ無く台を捨てたのか、或いはズブの素人で、ノーマルだと思ったのか。もしや、凄く打ち込んでいる常連で、このビッグが連チャンしない、何らかの「サイン(挙動)」を見抜いたのか…。
あれこれ考えたが、答えは出るはずもない。しかし、ビッグを終えた0ヤメ台が、気前よく捨てられたのは、明白な事実。ここは、どう考えても「移動」が正解だろう。
幸い、これに気付いて後釜を狙うハイエナの姿はない。ただ、露骨に飛びついてハイエナするのもアレなので、お姉さんがシマから消えたのを確認して、サッと台移動を決行した。
もし、この台が「アレ」で、しかも連ゾーンに入っていたら、すぐに「ウハウハ」な展開が訪れる。うまくいけば、今日の負け分も回収できる…と、期待感タップリに打ち始める。
だが、ビッグ後のクレジット分を打ち込んでも、さらに100ゲームまで回してみても、大当りはサッパリ引けない。バケすら、全く引ける気配がない。
そう、彼女が捨てたのは、ただの「単発ビッグ」だった。まさか、初めから見切っていた…?
ぬか喜びにガックリしつつも、「ひょっとして、引き戻しがあるかも…」と、投資を続ける事に。
ただ、「ビッグ終了後から打ち始めた」という特殊な状況が、何となく、「やめるにやめられない」雰囲気を作ってしまった。このまま投資が止まらなくなれば、大事である。
勝手も知らぬ遠方の地で、大負け喰らって凹むのだけは、何としても避けたい…。
そこで、「アレ」な機種の引き戻しゾーンでありがちな、「400ゲーム」を限度にヤメようと決意。何があっても、この線を超える事だけはダメと、強く自分に言い聞かせる。
そんな覚悟を決めた矢先の350ゲーム辺りで、まさかの「初ビッグ」が入った。0ゲームヤメから追ったので、案外と投資が掛かった。
リーチ目もリール制御もよく判らないから、唐突にビッグが飛び込んだ感じだ。かなり攻撃的なファンファーレに、ちょっと腰が浮く。
ビッグ中に、あらためてリール配列を観察すると、リプレイハズシは効きそうな気配※。
※ハズシは可能だが、配列上、「上段受け」しかハズせない(保険ハズシで対応可)。
しかし、もしこの台が「アレ」な台で、なおかつ、ハズシで連チャンが止まるVerだったら、あまりに勿体ない。念の為、ハズシはせずに、順押し・小役狙いで消化。それでも、小役はそこそこ落ちるので、ハズシなしでも380枚以上は出てくれた。
そして、「連チャン」への期待を込めたビッグ終了後。まずはクレジット分を回したが、ボーナスは入らず。50ゲーム回しても、100ゲームを過ぎても、ダメ。これって、もしやノーマル…?
すると、150ゲーム辺りで、レギュラー(サメ)が揃う。どうやら、左リールの「7・スイカ・サメ」は「強い目」のようだ(註:スイカこぼしorボーナス)。「D-ZONE」と書かれた「0枚役」も、揃えば、おそらくリーチ目だろう。もし、コイツがダイナマイトバージョンなら、このバケをきっかけに、ガンガン噴く可能性もある。
しかし、バケ後は何も起こらぬまま、あっさりと100P経過。ヤバい、本当にノーマルかも…。
すると、持ちコインをノマレる寸前、再びビッグを引く。これで、首の皮一枚繋がった。
さらに、そのビッグが終わって、80ゲームほど回した所で、またビッグが入る。
これは、ひょっとして、来たのか…?
そう、まさに、このビッグをきっかけに、待望の「アレ」がやって来たのだ。ビッグ終了後、クレジット内でビッグばかりがポンポン続く、シビれる展開に。
たまに、50ゲーム以上かかる事もあるが、大半がビッグの「速攻」連チャン。やっぱり、コイツは正真正銘の「アレ」であった。
こんなに出るのに、何で、こうも客付きが悪いのか…。やはり、爆裂度が高い分、初当りがキツかったり、滅多に連チャンしなかったりと、そういう類の台かも知れない。むしろ、この程度の投資で済んだのは、運がよかったのかも。
連チャン中は、赤7が左・中リールでテンパれば、面白いくらいにそのまま揃う。左リールの「7・スイカ・サメ」や「リプ・7・スイカ」も、ほぼガセらない。リール窓上の「WARNING」ランプも、途中で消えずに、第3停止まで点灯する場合がほとんど。さらに、第三停止時、派手な効果音と共に、いきなり「WARNING」ランプがつくことも。
さらに、レバーオン後、リールがしばらく回り出さない「フリーズ」(註:本機での呼び名は「クラッシュ」)のレア演出も、1回だけ出てしまった。町田の「さくら屋」でつい先日打った、「キングジャック」を思い出す。何とも凄い演出だ。
一撃の破壊力も凄いが、これ程ビッグが立て続けに出ると、リーチ目や演出といったゲーム性も存分に堪能できる。いやぁ、いい台に座ったな。
そんな感じで、あれよあれよという間に、ビッグオンリーの10連チャンを達成。短時間で3500枚のコインを獲得。これで、本日の「逆転勝利」がほぼ確定。後はアツくならず、連チャン終了後、すぐにヤメればよい。
結局、最後に単発バケを引いて(バケは自力っぽかった)、引き戻しゾーン(?)の400ゲームを超えても当たらずに、ヤメ。ちょっと引っ張ったので、ピークの枚数よりは少し減ったものの、それでも3000枚オーバーの大量獲得である。
うーむ、旅打ち時の私の「ヒキ」は、何か特別なモノがあるのだろうか…。
ズシリと重いドル箱を担ぎ、意気揚々とシマ端のジェットカウンターに向かい、コインを流す。予想通り、3000枚チョイ獲得だった。
等価交換なら6万、6枚だと5万、7枚でも4万強だ。予想外の嬉しい展開に、自然と頬も緩む。
景品カウンターで特殊景品を受け取ると、裏手の自動ドアから、同じビル内にあった換金所に向かう。特殊景品を小窓に差し入れて、出てきた現金を受け取って数えてみると…
「あれ、何か、ちょっと少なくないか?」
3000枚も出したのに、手元には「3万ン千円」しかないのだ。これって…まさか?
そう、この店の換金率は、まさかの「7.8枚交換(或いは「8枚」かもしれない)」だった。
(換金を誤魔化された可能性もあるが)
余裕の大勝ちかと思いきや、最後の最後に、期待外れの「ドンデン返し」が待っていた。
まぁ、それでも勝った事に変わりはなく、それまでの負債を全部取り返して、さらに「お釣り」が来る収支にはなった。その夜、何を食べたかは…ちょっと思い出せない(多分、コンビニ飯)。
それにしても、この時は、名古屋駅(太閤口)での実戦が「たまたま」不調で、「たまたま」栄に移動する気になり、「たまたま」栄から金山に出向き、「たまたま」入ったホールで、「たまたま」ディーゾーンを見つけて、「たまたま」近くのお姉さんがゼロヤメしたのでハイエナしたら、「たまたま」3000枚オーバーの爆発を見せた。まさに、全てが「たまたま」づくしで、「偶然の産物」だった訳だ。
ちょっとしたタイミングのズレで、この台、そしてこの展開に出会えなかった可能性もある。だから、こんな陳腐な体験でも、「一生に一度の出会い=一期一会」と呼ぶ価値は、十分あるハズ。
因みに、金山で勝った翌日は、チェックアウト後、すぐ名古屋駅から帰京した。その後、金山・某店でディーゾーンと対決する機会もなく、都内・神奈川で遭遇するチャンスもなかった。
但し、都内に設置が無かった訳ではなく、たまたま、自分の活動エリアで見かけなかっただけ。当時の設置状況をあらためて調べると、案外と、色んなホールに導入されていた模様。
まぁ、早い話が「金山の7.8枚交換の店で、「アレ」なディーゾーンをハイエナして、約3000枚出した」だけに過ぎない。
しかし、そこには、上述したドラマチック(?)な展開が、ガッツリと凝縮されているのだ。
たった一度の出会いだったが、この時のディーゾーンにまつわる稀有な体験は、私のスロ歴において、強く印象に残るものになった。
このテの記事に「需要」は少ないかもしれない。それでも、共感して頂ける方がたった一人でもいれば、それだけで私は十分だ。
(参考)
(2000年5月、名古屋旅打ちの証…ホテル宿泊料金の「預かり証」が2枚。このホテル代と、行き帰りの交通費は、太閤口の「シオサイ30」と、金山の「ディーゾーン」が賄ってくれた。)
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ディーゾーン(エマ、4号機)の思い出
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