今から約3年前、当ブログで昭和末期の日本映画「マルサの女」(伊丹十三監督作品。1987年公開。「脱税」がテーマ。)の「パチンコ店ロケ」について取り上げた事がある。
コチラの記事
http://blog.goo.ne.jp/selfconfide777mc/e/548d9a23aa069d43633e179a2ed2176e
私は学生時代から、本作はじめ「伊丹作品」(お葬式、タンポポ、マルサの女2、ミンボーの女、スーパーの女、あげまん、マルタイの女…etc)のファンであった。
社会の「闇」に鋭く突っ込む追及姿勢、先見の明を感じる斬新なテーマ、事前の綿密な取材活動、ミリ単位の構図にも拘ったという妥協なき撮影姿勢、絶妙なキャスティング、そして「正義と悪」という分かりやすい構図で「カタルシス」を感じる内容…私にとっては、まさに「病み付き」になる作品の連続であった。それだけに、1997年に伊丹監督が亡くなった時のショックはあまりに大きかった。
その伊丹作品の中で、「パチンコ」絡みのロケシーンがあるのは、本作(マルサの女)のみだった。
(なお、続編「マルサの女2」では、主人公の板倉亮子(宮本信子)が、エリート新米査察官の三島(益岡徹)を現地調査に連れていき、「このラブホテル、このナイトクラブ、このソープランドとあちらのパチンコ屋、みんな鬼沢(三國連太郎、宗教法人理事長)が影のオーナーだ」と伝える場面がある)
そこで、3年前の記事では、レトロパチンコ的な観点から、本作で登場したパチンコ店での撮影シーンを、出来る限り詳細に「分析」した(背後に映る台の機種名、店内で聞こえる機種サウンドの正体、亮子が大当りしたデジパチの機種名など。詳細は過去記事参照)。
しかし、ただ一点、「ロケ地となったパチ屋が、どこの何という店か」に関しては、全く分からずじまいだった(エンドロールの「撮影協力」クレジットでも確認できず)。
私が一番知りたいのが、まさに、その部分だったのだが…。
その時は、映像の様子や本作ロケ地の「傾向」から、小田急線・経堂駅南口商店街の「ミナミ」が怪しいと睨んだのだが、その後の「追跡調査」で、かなり有力と思われる情報を掴んだので、報告したい。
先日、たまたま同作の「メイキング」映像を見る機会があった。このメイキング作品は、本作公開と同年にリリースされたもので、私自身、’90年代に地元のレンタルビデオ屋で、2,3回ほど借りた記憶があるが、その時は、特にパチ屋の「正体」に注目することなく、ごく普通に視聴したのみだった。
だが今回は、パチ屋絡みの情報はどんな細かな物も見逃すまいと、かなり綿密にチェックした。
その結果、メイキング映像の中に、以下のような場面があるのを確認する事が出来た。
ロケ地となったパチンコ店の入口で、主役の宮本信子(税務調査官、板倉亮子)が、共演者(故・小沢栄太郎、パチ屋の顧問税理士)と撮影前に談笑するメイキングの場面だが、入口前に置かれた花輪に、「シルクロード」と書いてあるのを偶然見つけたのだ。
メイキングでこのシーンが映るのは一瞬で、しかも本編では映らない為、今まで全く気づかなかった。
もちろん、「花輪」といっても、撮影用に作られた「架空」のものである可能性は否定できない。
しかし、「シルクロード」というパチ屋は当時現存しており、本作のロケ地を突き止める上で、大きなヒントとなる事は間違いない。
次に、当時「シルクロード」という名のパチ屋があった、首都圏の各エリア(淵野辺、鴨居、千歳烏山、etc)と、映画本編のシーンを結びつける「手がかり」はないかと、本編映像を繰り返し確認した。
すると、伊東四朗演ずるパチ屋(大幸商事)の社長(大嶋幸蔵、赤ジャージ姿)が、脱税を疑う調査官・亮子(宮本)の厳しい追及を受けて、ついに「逆ギレ」して店を飛び出した後、電柱にしがみついて泣きわめくシーンの中で、その「手がかり」らしきものを見つけた。
赤い矢印で示した、画像奥・上部に注目して欲しい(人物は、右から伊東、小沢、宮本)。
残念ながら、手前の人物側に照準が合っている為に、奥は「ピンボケ」状態で確認しづらい。
だが、よく見ると、矢印の部分は小さな「看板」で、青地に白で「6〇〇」と思しき文字が書いてある。
そこで、「シルクロード」があった各エリアの画像をストリートビューで調べたところ、これまた偶然にも、京王線・千歳烏山駅の商店街の一角に、こんな看板があるのを発見した。
(C)Google
「6番街」と書かれた、小さなブルーの看板。
これは、京王・千歳烏山駅北口(西口)「6番街商店街」という、昔ながらの商店街の路地にある。
そして、実はこの「6番街」沿いで、かつて「シルクロード」という名のパチ屋が営業していたのだ。
(既に閉店。現在はマンション)。すぐ近くには「サンシャイン」というホールもあった(現「Mr.D」)。
(参考)京王線・千歳烏山駅周辺のパチンコ店マップ(1990年)
http://blog.goo.ne.jp/selfconfide777mc/e/4e6e11fa71beb0703224c2e81c3c6db1
元の映像がハッキリしないので「断言」は出来ないが、看板の色が青で、数字の「6」の字体も似ている。その後ろに続く「〇〇」の不鮮明な文字も、こうなると「番街」に見えてくるから面白い。
この事から、本編でボンヤリ映っていた青い看板は、恐らくこれと同じタイプ(看板の設置場所は違うかもしれない)と思われる。
これらの情報を勘案した結果、本作のパチンコ店ロケは、千歳烏山駅北口「シルクロード」で撮影された可能性が高い、との結論に達した。
長らく不明だったロケ地が判明して、やっとスッキリした気分だ(少々「見切り発車」的な感じもするが…)。
今後も、情報の精度をより高めるべく、引き続き調査を行い、新たな情報を掴み次第報告したい。
まぁ、「こんな古い情報を発掘して、今さら何の意味があるのか」というツッコミもあろうが、ご存知の通りの完全な「自己満足ブログ」なので、聞く耳は持たない。この記事も、一部の「少数派」に届けばOKである。
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映画「マルサの女」(1987年)、パチンコロケ続報
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