1991年(平成3年)に奥村遊機から登場した新要件デジパチ「パラダイスI」
★賞球…7&15
★大当り確率…1/225
★大当り図柄…15種類(0~9、Fv、¥、$、当、果物)
★デジタル停止順…左→中→右
★最高16ラウンド継続
★出玉…約2300個
★兄弟機
・パラダイス2(賞球7&13、大当り確率1/220)
・パラダイス3(賞球7&15、大当り確率1/218(1/213とする情報もあり))
旧要件の名機「ドリームX」(関西方面は「ドリームW」)の流れを汲んだ、いかにも当時の奥村らしいシンプルなドットデジパチ。デジタルのサイズや図柄は「マーブルX」譲り。
ドリームXからの時系列の流れは、「ドリームX」→「ローリングセブン」→「マーブルX」→「パラダイスI」だが、オマケチャッカー無しの「新要件機」では、本機が「初のドリーム後継機」にあたる。
因みに、本機のすぐ後に、「マーブルDX」というドットの小デジ確変機(マーブルの後継機)もデビュー。なお、パラダイスIより先にリリースされた「リバティI」(1990年、奥村初の新要件デジパチ)は、ドリームXというより、むしろ旧要件機「ビルボード」の後継機であろう(兄弟機リバティII、リバティIIIも同様)。
大当り図柄は、旧要件のローリングセブンやマーブルXを、そのまま踏襲(ドリームXで使われた「V」図柄も、マーブルやローリングと同じく「当」図柄に変更)。非常にシンプルだが、揃うと嬉しい「ツブツブドット」であった。
本機では、デジタル始動の瞬間、ピョコンと勢いをつけて回転を始めるような、独特のアクションも見せた。リーチはノーマルのみとシンプルだったが、ビタ止まりならではの香ばしさ(刹那の興奮)が感じられた。
都内では比較的導入率も高く、ドリームXの「後釜」として本機を入れるケースも多かった。マイホの新宿でも、歌舞伎町の日拓チェーンや、大ガード前のニューミヤコ、ヨドバシ近くのアラジンなど、それまでドリームXが活躍した店に、新装で本機が並ぶのをしばしば見かけた。
さて、本機を語る上で外せないのが、タイトルにもある「ラッキーナンバー狙い打法」であろう。
無制限主流の現在とは違い、当時は、特定図柄で当った場合のみ継続可能、その他は1回交換とする、「ラッキーナンバー(LN)制」※のルールを採る店が、少なくなかった(LNで当ると、「連続挑戦中」などの継続札が頭上に刺さった)。
もちろん地域性も豊かで、無制限主体のエリアや1回交換メインの地域もあった。また、各ホールが独自のカラーを出すべく、店舗ごと・シマごとに、持ち玉ルールが異なったりもした。
※「3、5、7で継続、4、6、8で交換」等、LNと交換No(アンラッキーNo.)をあらかじめ店側が指定。午前中などにサービスタイムを設定して、その間だけLNの数を増やすホールもあった。「3,7で当れば無制限」など、特定の図柄を「無制限No」とした店も、LN制の一態様であろう。
しかも、換金率は都内だと「2.5円」が主流で、持ち玉遊戯と現金投資のギャップが大きかった。
当然、初当りがLNならば、その後の投資を抑えて有利に戦う事ができた訳だ。
本機に確変機能などはなく、どの図柄で当っても出玉的には全く同じだが、LNで当るか否かは、非常に重要だったといえる。
そんな折、「本機で意図的にLNを狙える」という攻略ネタが、平成3年の6月頃から、主力の「必勝G」誌をはじめとする各攻略誌で取り上げられるようになった。
(LN狙いは先行機マーブルXでも可能で、内部システムが類似する本機でも応用可、とされた)
因みに、パラダイスIといえば、故・田山幸憲プロも、池袋S店時代に勝負していた時期がある。劇画版「パチプロ日記」では、夜の飲みの席で、狙いを付けたパラダイス(253番台)を連日追っていた田山さんに、S店の常連「学生プロ」が、LN狙いの手順を得意げに教える場面がある。
ただ、田山さんの方は、「俺が狙ったのは、ラッキーナンバーがどうかなんてのじゃない。デカイ波の時期だ。」とあくまで持論に拘って、このテの攻略ネタに食いつかない様子だった。
(同じS店で、西陣の新要件ハネモノ「カバ丸くんP3」の継続アップ打法を「パチンコ少年」から聞かされた時も、同様の反応を見せている)
さて、LN狙いの手順はさほど難しくもなく、まずは、連続回転(保留1個以上が点灯した状態)に入ったら、最初に右デジに止まった図柄をチェックする。
この右出目を「基準出目」として、そこから「連続回転をキープ」するか、或いは「いったん打ち出しを止めるか」の判断を行う。
たったこれだけでLN狙いが可能だった訳だが…それは、以下の明快な特徴があったからだ。
例えば、連続回転に入って最初に止まった右出目(基準出目)が「8」だったとする。連続回転をキープした場合、その1回転後に大当りする図柄は、基準出目と同じ「8」か、1つ手前の「7」になる。2回転後に当る場合も「8」か「7」で、3回転後だと「7」で揃う…という具合だ。
(もちろん、その回転で「必ず当る」のではなく、仮に当った場合の図柄がそうなる、という事。)
以下、4回転目は「7」or「6」、5回転目も「7」or「6」、6回転目なら「6」…というように、連続回転中の大当り出目には、基準出目を軸にした、明確な「移行法則」が生まれた。
よって、連続回転をキープできれば、基準出目を目安にして、大当り図柄を「逆算」できたのだ。
端的にいえば、連続回転中は、概ねデジタルが3回転する毎に、大当り図柄が基準出目から1つづつ手前に下がる(8→7→6→5→4→という具合に)。
もちろん、大当たりそのものを直撃する技ではない(大当りは「自力」で引く必要あり。なお、兄弟機「パラダイス3」には、体感器や電チュー開放周期を利用した、大当り直撃法が存在)。
しかし、連続回転に入った最初の右出目をチェックするだけで、その後の大当り図柄を逆算できるのだから、体感器などに縁遠い一般ファンでも、とっつきやすいネタといえた(実行する根気があるかは別にして)。
この特性を利用して、例えばLNが「3、5、7」の場合、基準出目が「¥」「Fv」「9」「8」「7」「6」「5」「4」「3」なら、そのまま連続回転をキープして、「射程範囲」にあるLNを積極的に狙う。但し、連続回転を続けるうちに、いずれLNも通り過ぎてしまうので、ある程度回したら、連続回転をいったん切る。
(基準出目が「3」だと、チャンスは2回転しかない。)
もちろん、回りが悪く連続回転が途切れてしまったり、途中でリーチが掛かったりした場合は、移行法則が崩れてしまうので、最初からやり直す(一応、デジタル停止中の飾りランプ点滅や、リーチ時の右デジ移行コマ数から、カウンターの「ズレ」を計算出来たが…)。
一方、LNから遠ざかる位置、即ち「2」「1」「0」「果物」「当」辺りが基準出目だった場合、そこから連続回しを続けても、しばらくは「3,5,7」のLNで当る事はないので、すかさず連続回転を切り、保留消化を待ってから、あらためてデジタルを回した方が効果的となる。
因みに、池袋S店では、パラダイスを含むデジパチは「1、3、5、7、9」(奇数)がLNとなっており、件の「学生プロ」も、劇画の中で「山楽のルールなら、右出目(註:基準出目)が絵柄ならいったん切って、数字で始まったら回せばいいワケです」と、田山さんに解説している。
以上の手順を繰り返すだけで、ただ漫然と打つよりも、LNで当る割合は俄然高くなる。正確な大当り出目を予想せずとも、LNが明らかに期待できない時のみ打ち出しを止めれば、相応の効果があった。「連続回転キープ」が肝要なので、チャッカーのシブい台だと厳しいが、それでも意識してLN狙いをするのとしないのでは、収支に明確な差がついた。
かの石橋達也プロ(平成3年当時は必勝G誌で執筆。後に攻略M誌に移籍)も、このLN狙い打法を駆使して、江古田の「ゴールドラッシュ」等で、連日プラス収支をキープする事に成功している(同店は「3,7で当ると、再度3,7で当るまで継続可」のルールだった)。
ところで、このLN狙い、「内部プログラム」的に考えた場合、一体どうなっていたのだろうか。
これを説明するには、本機の「大当り判定」と「出目決定」の方式を、理解する必要があろう。
★大当り判定
「1~225」の計225コマの乱数カウンターを使って、一発判定する仕組み。当選値は「7」のみで、大当り確率は1/225。乱数の移行速度は1コマ0.0025秒で、1周(225コマ)0.5625秒。これが、大当りカウンターの周期となる。
乱数を取得するタイミングは、始動チャッカーに入賞した瞬間。但し、チャッカーに連続入賞した場合、拾った乱数をいったん保留エリア(1~4)に格納しておく。
この乱数を元に「大当り判定」を行うが、判定タイミングは、単発回し時と連続回転中で異なる。
(単発回し時)
始動チャッカー入賞の瞬間に乱数を拾って、同時に当否の判定も行う。
(連続回転中)
チャッカー入賞時に拾った乱数を、保留エリアにいったん格納。その後、保留消化の瞬間(デジタル始動直後)に再び取り出して、当否の判定を行う。
★出目の決定
ハズレ時と大当り時とで異なるので分説するが、その前に「出目カウンター」について説明。
出目カウンターは、左・中・右の計3つ。いずれも、各デジタルの図柄に対応して「0~14」の計15コマだが、カウンターの移行速度は異なる。
一番速いのが左(1コマ0.0025秒)で、次が中(0.0375秒)、一番遅いのが右のカウンター(0.5625秒)。なお、3つの出目カウンターは、左が1周すると中が1コマ進み、中が1周すると右が1コマ進むという、「ケタ上がり」の関係にある。
カウンターの値(乱数)と図柄の関係は、以下の通り。
各出目カウンターは「反時計回り」に動いており、カウンターが1コマ進む(実際は「戻る」)たびに、デジタルの表示出目は1つづつ下がる(当→$→¥→Fvという具合に)。
なお、大当りカウンター(225コマ)と左・中出目カウンター(15×15=225コマ)は、ピッタリ同調している。これは、先行機「マーブルX」と全く同じ。マーブルの場合、左・中で「0」がテンパイする(0リーチが掛かる)位置と、大当り乱数「0」の位置が重なっていた為、通常時の0リーチは「鉄板」となっていた(大当り後の保留消化時は例外アリ)。
しかし、本機の大当り値は「0」ではなく「7」である(「1~225」なので、そもそも「0」がない)。これを表示出目に置き換えると、左デジタルが「8」(始点の「0」から、反時計回りに7コマ「戻る」)で、中デジが「0」(左が15コマ進んでいないので、「0」のまま)。つまり、「80X(Xは何でもよい)」というバラケ目は「大当り」を意味する。だが、大当り時は右出目カウンターの値をゾロ目で表示するので、「80X」のバラケ目が出る事は、基本的にあり得ない(あるきっかけで内部状態が「豹変」すると「80X」が表示されたが、これについては別の機会に譲る)。
以下、出目決定方式を「ハズレ時」と「大当り時」に分けて説明する。
(1)ハズレ時
チャッカー入賞の瞬間に拾った左・中・右の出目カウンターの値を、ハズレ出目として表示する。但し、偶然3つ揃いになった場合、右デジを+1して強制的に外す(1コマズレのハズレリーチ)。なお、連続回転中は、出目カウンターの値を保留エリアに格納後、保留消化の瞬間(デジタル始動時)に再び取り出してハズレ目を表示。
・ハズレ時=常に「チャッカー入賞時に拾った各出目カウンターの値」を表示
(2)大当り時
左・中のカウンター値は一切参照せず、右カウンターの値を左と中にもコピーして、3つ揃いのゾロ目(大当り図柄)を作成する。
単発回し時は、チャッカー入賞時に拾った右カウンターの値が、そのまま大当り出目になる。但し、連続回転中は、チャッカー入賞時のデータを無視して、保留消化の瞬間(デジタル始動時)に、右カウンターの値を拾い直して、あらためて大当り図柄を決定する。
・大当り(単発回し)=チャッカー入賞時の右出目カウンターの値を、大当り出目として表示
・大当り(連続回転)=チャッカー入賞時ではなく、保留消化時(デジタル始動時)の右出目カウンターの値を、大当り出目として表示
そして、この「右出目カウンターの乱数拾い直し」こそ、LN狙いを可能にする最大の肝だった。
実は、当時の必勝G誌と攻略M誌が、この「乱数の拾い直し」を巡って、激しく対立した事がある(1991年8月頃から数ヶ月)。G誌は拾い直し説を一貫して肯定したが、M誌は「大当り時も、ハズレ時と同様、チャッカー入賞時の右出目カウンターの値が使われる」旨を主張。G誌の拾い直し説を真っ向から否定して、「連続回しでは右カウンターの周期がズレてしまう為、大当り出目の逆算は、単発回し時のみ可能(体感器が必要)」とした。但し、結果的には、明らかにG誌側に軍配が上がった。
と、ここまでが基本的な判定の流れだが、実際にLN狙いが出来た理由とは?
まぁ、簡単にいってしまえば、「デジタル変動時間の周期と、右出目カウンターの移行周期が、非常に近かった」からである。
デジタル変動時間(「変動→静止」)は、リーチが掛からない限り常に一定で、「8.65秒」となっている。
一方、右出目カウンターは「1コマ=0.5625秒」で動く為、15コマ進む(1周する)のに要する時間は、0.5625×15=「8.4375秒」。内部カウンターの周期としては、非常に遅い部類だ。
すなわち、両者は非常に周期が近く、誤差は「0.2125秒」しかない。これは、左出目カウンター(1コマ0.0025秒)に換算して、ちょうど85コマ分である。右出目だと1コマ未満だ。
ただ、両者はピッタリ同調している訳ではなく、デジタル1回転毎に、左カウンター85コマ分のズレが生じる。
各カウンターは「ケタ上がり」の関係にあるから、右の1コマは左の225コマ分に相当する。よって、単純計算では、85×3=255、即ちデジタル3回転で右が1コマ(ちょっと)進む。
但し、最初の左出目カウンターの位置によっては、1回転(85コマ)で右が1コマ進む事もあるし、2回転で右が1コマ進むケースもある。この場合、連続回転が長びけば、予想出目と実際の内部カウンター値との間に、ズレが生じる。ただ、「3回転毎に1づつ下がる」の原則さえ押さえておけば、さほど大きなズレにはならない。
ところで、連続回転に入って最初に現れた右出目を、「基準出目」と定義した。
この基準出目は、チャッカー入賞時に拾った右出目カウンターの値を、そのまま示すものだ。
つまり、右カウンターの位置を外部から知らせる、重要な「手掛かり」となる。
連続回転中は、リーチが来ない限り、デジタルは常に「8.65秒」の周期で回転→停止を繰り返す。
一方、大当り判定に当選した場合、大当り図柄を決める右出目カウンターの乱数を拾う(拾い直す)タイミングも、連続回転中は「デジタル始動の瞬間」と決まっている。やはり、こちらもリーチが掛からない限り、周期は常に「8.65秒」と一定だ。
したがって、最初の基準出目さえ判れば、その後のデジタル回転数と「85コマ」分のズレを計算するだけで、その先の大当り出目を逆算できる事になる(3回転につき図柄は-1)。これが、本機のLN狙いを内部的に見た場合の「根拠」だ。
ただ、注意すべきは、逆算可能なのは「大当りした場合の右出目カウンター値(大当り出目)」であって、連続回転中の「ハズレ目」まで先読みできる訳ではない。
たとえ連続回転中でも、ハズレ時の右出目は始動チャッカーの入賞タイミングでバラつく為、先読みする事は出来ない。あくまでも、連続回転時の「基準出目」を把握すれば、その後のハズレ目とは「無関係」に、大当り図柄の逆算が可能…という事である。
因みに、本機には「特定の条件下では、同一のハズレ出目が数回転後に再び現れる」という特徴もあり、これが実質的な大当り確率を下げる要因となったが、これは別の機会に譲る。
まぁ、今さら感たっぷりの情報ではあるが、中には物好きな方もいるだろうから、こういったネタの供出も、決して無駄ではあるまい。
↧
パラダイスI(奥村、デジパチ) ラッキーナンバー狙い打法
↧