1998年(平成10年)にマルホンから登場した
CRデジパチ「CRレッツおとぎ村X」を回顧。
(同数字の3つ揃いで確変。中デジが「青鬼」のカードだと単発。)
・賞球:6&15
・大当り確率:1/296.5 (通常時) 1/74(確変時)
・デジタル停止順:左⇒右⇒中
・大当り図柄:0~9(中デジはオールマイティの「青鬼」でも可)⇒計20通り
・確変突入率:1/2(数字3つ揃いで確変、中デジ「鬼」だと単発(確変終了))
・確変継続リミッター付(新基準CR機):初当りを含めて最高3回まで
・最高16ラウンド継続(9カウント)
・出玉:約2100個
・兄弟機
「CRレッツおとぎ村A」…最高「5回」のリミッター付き
「レッツおとぎ村S」…本機の現金機Ver
(時短デジパチ。突入率は1/2。次回大当り獲得か、
赤鬼or青鬼の図柄でリーチが掛かるまで、時短継続)
本機リリースの1998年は、業界にとって一種「冬の時代」でもあった。
2年前の1996年、ファンから圧倒的支持を受けた連チャン機(現金機)や
一部の連チャンCR機などが、軒並み「社会的不適合機」の烙印を押され、
ホールからの(段階的)撤去を余儀なくされたのだった。
マルホン「ソルジャー」、SANKYO「フィーバーパワフルIII」、平和「綱取物語」、
西陣「春夏秋冬」「CR花満開」、大一「エスケープ2」といった数々の名機達が、
「過度に射幸性を煽る」などと、不適合のレッテルを貼られた。だが、ファンに
してみれば、「これほど面白い台が、なぜ撤去なのか?」と残念至極であった。
さらに、日工組の内規も改定され、CR機については「確変継続5回まで」の
上限(リミッター)が義務付けられた。一撃逆転を狙う「大物釣り」ファンに
してみれば、これも何とも歯がゆい仕様変更であった。なお、この内規改正で
登場したリミッター付きCR機は、「(97年)新基準CR機」と呼ばれる。
従前と大きく変わったスペック。特に、CRの十八番だった「爆発力」の封印は、
多くのファンに「消化不良感」を与えた。まぁ、新基準CRのマッタリ感を好む、
私のような打ち手もいた訳だが…。ともかくも、内規変更を契機に、パチ人気は
下降路線を辿る。それに代わって、人気を爆発的に伸ばしたのがパチスロである。
リミッターもなく、適度な射幸性を有するスロが、「技術介入」という若者好みの
特性と相俟って、幅広い層のファンに受け入れられたのだ。結果、パチから
スロへのシフトが進んでいった。
やや前置きが長引いたが、本機はそういった「デジパチ低迷期」の登場。
「3回リミッター付」のマイルドな台で、物凄くヒットした訳でもないが、
活動エリアでは遭遇機会も多かった。個人的に、本機の持つ「ユルさ」が
好みで、当時、首都圏エリアでよく対峙した機種の一つである。
そのユルさの典型が、リーチアクションだろう。「おとぎ村」の名の如く、
日本のおとぎ話(昔話)がモチーフで、リーチ時には様々なキャラが出現。
また、その登場の方法も意外性があり、コミカルでユニークなものだった。
リーチが掛かり、液晶背景の「川」の上流から、様々な物体が手前に
流れてくる。ピンクの「桃」らしきものがプカプカとコチラに近づき、
「桃太郎リーチか?」と期待するが、水面に浮かび上がって来たのは、
桃ではなく「豚」…。同様の「二択」は、他にも2パターン存在した。
さらに、高信頼度の「かぐや姫リーチ」「花咲か爺さんリーチ」と
いったSPリーチが出ると、期待度はさらに高まった。また、通常時
「右から左」に流れる背景の白い雲が、スタートチャッカー入賞と
同時に反転して「左から右」に流れれば、信頼度も一気にアップ。
(「CRレッツおとぎ村X」リーチアクションまとめ)
★デジタル回転中(予告)
(a)通常停止
(b)右図柄のスベリ(必ずリーチ発展。SP発展率アップ)
(c)雲の方向が反転(対応する保留は必ずリーチに。信頼度も大幅アップ)
★リーチアクション(大別して、a~dの4種類)
(a)ノーマル(左右テンパイ後、中デジが普通にスクロール)
※信頼度は非常に低いが、たまに当る
(b)ノーマルから発展⇒川の上流から「何か」が流れてくる
⇒以下の3パターンに分岐。
(i)ピンク色の物体⇒「桃(桃太郎)」or「ブタ」
(桃太郎なら、桃の中の「犬、猿、キジ」が上昇⇒中デジに掴まって下降)
(ii)赤い物体⇒「お椀(一寸法師)」or「やかん」
(一寸法師なら、「打ち出の小づち」で中デジをバシッと叩いて止める)
(iii)おかっぱ頭⇒「金太郎」or「カッパ」
(金太郎なら、斧を上にポーンと放り投げる。その斧が
中デジに刺さった状態で降りてくれば、大当りとなる。
※何れも「おとぎ話キャラ」の方が高信頼度。特に桃太郎リーチがアツい。
一寸法師や金太郎だと、ハズレも多い。ブタ、やかん、カッパのリーチは
さらにハズレまくりだったが、稀に当ってビックリする事も。
(c)リーチ直後、画面左に「竹」出現⇒放射状に光り輝く
⇒かぐや姫リーチ(高信頼度)
※いったん通常図柄(中デジ鬼)で当った後、かぐや姫が
着物を脱ぎだすと、必ず二段階に発展して確変に昇格する。
(d)リーチ直後、画面全体に「花びら」落下
⇒花咲か爺さんリーチ(高信頼度)
※通常図柄が揃った時に、中デジが大当り図柄を
半コマ通り過ぎてから戻りで当った場合、必ず
再始動して確変に昇格する。
※爺さんの撒く花びらの形が、中デジ停止図柄を示唆。
★(a)~(d)何れのリーチも、通常図柄で当った時に、
中デジが再始動するチャンスあり。確変昇格もあるが、
再び青鬼(単発)で停止する事もある。なお、再始動で
確変が「確定」するのは、上記の2パターン。
(花咲か爺さんの「半コマ戻り」と、かぐや姫の「服脱ぎ」)
(かぐや姫リーチ)
花咲か爺さんリーチ⇒「333」(確変)大当り
また、盤面ヤクモノに着目すると、「波」を模した回転板ステージが、
液晶の下で絶えず回転していた。回転ステージの手前には、クシ状に
並んだ5つの溝を有する「仕切り」も存在。左右ワープからステージに
乗った玉が溝の間を通り抜けると、そのまま手前(ヘソ側)に落ちる。
一方、仕切りが邪魔して溝を通過できなかった玉は、一旦ステージの
裏に隠れた後、再び回転板に乗って手前へと戻る。こうして回転板に
「翻弄」されつつ動いた玉が、中央の溝から転がり出れば、真っすぐ
センターのヘソに向かう訳だ。因みに、回転板のクセのいい台だと、
中央以外の溝からでも、度々ヘソに入った。どこかハネモノチックで、
面白いギミックだったと思う。
「爆発力は旧フルスペックに及ばないが、ファンが「楽しめる」台を作って、
人気の低迷を回復させたい」といったメーカーの気持ちが、かくもキッチリ
作り込まれた演出群に繋がったのではないか。「規制の枠に苦しみつつも、
開発陣の知恵と創意工夫で、魅力的な台を創出する」のは、まさに業界史
そのもの、といえるかもしれない。
ただ、こうした新基準機の登場が、ファン離れを招いたのも事実。
それに伴い、業界の不況も進み、各地でホール閉店も相次いだ。結局、
1999年に内規は再改定され、リミッター規制も撤廃されるに至った。
(リミッター222回(実質撤廃)のSANKYO「CRFゼウスSX」登場が、
大きな話題となった)
一方で、確率甘めの現金機を好んだ私は、本機や「CR柔キッズ」(京楽)、
「CRモーレツ原始人T」(豊丸)、「CRデラマイッタJ-3」(同)、
「CRがきデカ5」(三星)、「CR花満伝説Z」(西陣)等のリミッター
付き新基準CR機を(現金機に準して)案外好んで打っていた。
爆発力はあるが、ハマリもキツい旧フルスペック。それよりは、マイルドな
新基準機の方が「とっつき易く」感じられて、実戦機会も増えたのだった。
つまり、私の中で見れば、新基準CR機は概ね「好評」だった訳だ。むしろ、
リミッター撤廃後、(個人的に)スロへのシフトが加速したのを思い出す。